玉川上水日記

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映画「チェンジリング」

チェンジリング
2008年 / アメリカ / 監督:クリント・イーストウッド / サスペンス

【あらすじ】
1928年、ロサンゼルス。9歳の息子ウォルターと暮らすシングルマザーのクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)。ある日、クリスティンの仕事中にウォルターは失踪してしまう。誘拐か家出かわからないまま5ヶ月が過ぎた。警察から息子が見つかったと連絡を受け、息子と再会したクリスティン。しかし、息子はまったくの別人だった。

【感想】 ネタバレしてます。
ジャンルで「サスペンス」としましたが、警察権力の腐敗と戦う女性の物語です。実際に起きた連続児童誘拐殺害事件(ゴードン・ノースコット事件)と被害者の母親に起きた出来事が元になっている。

ロサンゼルス警察の腐敗がすさまじい。功名心のためなのかよくわからないが、息子が別人であるという母親の話に耳を貸さないJ・J・ジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)。

帰ってきた息子の身長が誘拐前より7センチも縮んでるとか、歯の治療記録を医者で調べたと言ってもまるで聞く耳を持たない。学校の先生も別人と主張している。調べればすぐにわかる話である。だが、事件はもう解決したの一点張りである。

警察から医者を送り込み、彼女の頭がおかしくなったとマスコミに説明させ、挙句の果てに彼女をむりやり精神病院に送り込んでしまう。

もうね、クリント・イーストウッドがこの人を撃ってくれないかと思いました。本当に。あまりのひどさに悶絶する。ただ、警察内部にもきちんと捜査をした刑事はいたし、彼女を助けた牧師や弁護士もいたのが救いである。

現代はこういうことが起きなくて安心だね!とも言えない。ついこの間、大阪地検特捜部の主任検事による証拠改竄事件があった。現代でも権力が人を陥れる事件は起きているし、有能さと倫理観は残念ながら無関係である。

ここまでうまい悪役を演じたJ・J・ジョーンズ警部役のジェフリー・ドノヴァンはこの映画のMVPかもしれません。ジェフリー・ドノヴァン、嫌い。嫌いになるぐらい良かったです。クリント・イーストウッドが撮る作品は登場人物の善悪がはっきりわかるものが多いですね。イーストウッドの人柄ゆえなのか、曖昧な人物は少ない気がする。

で、息子と言い張るこの子は誰なのかということですが、ロスに来れば有名人に会えると思って家出してきたという困ったちゃんなのでした。おまえなあ!ほんとに!頼むよ!と画面の前でひとしきり怒りました。

1928年という時代の雰囲気も興味深かったです。クリスティンが働く電話の交換所のようなところは、すみやかに移動するためか、ローラースケートを履いているんですね。

これ、足元は映ってませんが履いてます。スイスイ移動します。

他にも警察の腐敗に対して教会が先頭に立って戦うというのも驚きました。思いのほか攻撃的なのである。警察がいい加減だから、そうならざるを得なかったのかもしれない。ラジオ放送や集会で警察の不正を訴え、その影響でデモも起きます。人権というものが意識されはじめた時代だったのでしょうか。

アンジェリーナ・ジョリーの口紅の赤さがとても印象的でした。それまで社会的弱者であり堪えてきた女性が社会に進出しだしたこと、口を開きだしたことを示しているように感じました。

アンジェリーナ・ジョリーというと派手にピストルをぶっ放しつつ財宝を見つけ、かっこいい俳優とイチャイチャというイメージだったのが‥‥、なんだか書き方が悪いね、オイ。とにかくそんなイメージだったのが、この映画では消えた息子を粘り強く探し続ける母親役がとても合っていました。

イライラする映画といえば「パリ20区、僕たちのクラス」もかなりのものでしたが、この映画もイライラします。いい映画なんですけど。ほんとにねー、ジョーンズ警部が全然話聞かないんだもの。あいつったら、もう!


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