玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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インク

▼この時期、家庭内の順位が上がる人は多いのではないか。それはパソコンでの年賀状印刷があるからです。このときだけはいばっている。ふだんの家庭内順位は、ベランダで雨風にさらされているアロエの鉢植えの次ぐらいですが、この時期はグーンと上がり、アロエの鉢植えを抜いて98位にランクアップします。早く人間になりたい。おうちに入れてほしい。

で、去年までは年賀状印刷をサクサクッと2、3日でこなしていたが、そうするとこの優位を短期間しか持続できないことに気づいた。ということで、この期間を4日、5日と引っ張ることで優位を継続させる方法を採ったところ、「無能」という烙印を押されました。「無能」て。またしてもアロエの鉢植え以下に。

実際のところ、インクを買いに行くのを面倒くさがっていたら遅れたのだけど。今日、量販店に行ってきました。年末ということもあり、インク売り場は混みあっていた。今はみんなパソコンで作成するせいか年配の方も多い。型番が書かれた紙を持ってウロウロしている人たちがたくさんいた。

わたしはなぜかよく店員に間違われる。店員顔なのか。なんだ、店員顔って。今日もインクの場所を聞かれたので速やかにご案内した。訊ねた方は、すぐにわたしが店員ではないことに気づいて謝ったが、インクの型番を探すぐらいたいした手間ではない。なにせ店員顔であるわたしが悪い。

純正品だと高いのでecoricaというリサイクルインクトナーを薦めた。これはかなり格安である。お孫さんの写真を印刷したが普通紙だとにじんでしまったというのでフォト光沢紙も薦めた。

プリンターの種類によりますが、特にパソコンに接続せずに印刷するタイプは純正品でないと紙をうまく吸い込んでくれない場合があります。だから、紙だけは純正品にしておくと無難かもしれない。そんな話をしていたら、今度はPCを一緒に見てくれないかと言われる。

わたしの数少ない特技として、「ヒマそうに見える」というのがありますが、このスキルがいかんなく発揮された。インクの会計を済ませた後、一階上のPC売り場にご案内した。しかし、PC売り場はすぐ店員が寄ってくるね。インク売り場はインクの整理や店内の飾り付けを優先していて、客が型番の紙を持ってウロウロしていてもほったらかしなのに。

インクは安い物だと一個千円もしない。店の懐に五十円入るのか百円入るのか知らないがそんなに大きい金額ではないというのはわかる。その点PCは一つ売れれば、高い物なら何万も入るのだろう。だからPC売り場に人員を割くというのはわかるのだけど。

だけど、インク売り場で親身に相談に乗れば、PCとまではいかなくても今後その店で買ってもらえるとか、他の物も買ってもらえるということもあるだろうに。結局、そのおじさんはPCの購入は見合わせた。インク売り場で店員が親切に接客しPC売り場の店員に引き継いだら、一台売れたかもしれない。

二十歳ぐらいの頃だろうか、新しくメガネを作ろうとメガネ屋に入った。どうにも目が疲れやすい気がしたのである。店員に視力を測ってもらったが、今のメガネで度は合っているという。目は体調によっても調子が異なるし、特に新しくメガネを作る必要はないでしょうと言われた。

うまいこと言って買わせることもできたはずだが、その店ではそういうことはしなかった。わたしは以後、その店がなくなるまでメガネはそこで買っていた。「『この人から買いたい』と、お客さんに思ってもらうことが大事だ」と父が言っていた。わたしは営業の仕事をしたことがないからよくわからなかったが、つまりそういうことではないか。

うまいことを言って客に買わせることは、一度ならできる。ただ、それはその場限りかもしれない。他にもっと安い所ができたら、そちらに行くのではないか。もし客の立場で親身になってくれる店があったなら、多少高くてもまたあそこで買うかと思ってくれるかもしれない。人件費は高いから、簡単にインク売り場に人を増やせとは言えないものの、それでも困っている客がいたらそれを助けるのが先ではないかと思う。それが結局は売り上げを増やすことに繋がると思うのだけど。

大丈夫ですかね、こんなに正しいことばかり言って。どうしたんだろう。頭の具合がおかしいのだろうか。

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