玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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ザ・タワーDS 心をこめて

▼一緒に仕事を請け負っているN氏から、ニンテンドーDSのソフト「ザ・タワーDS」を借りた。このタワーというのがまあネチネチしたゲームである。マンションやホテルなどのテナント運営をテーマにしたシミュレーションゲームです。

エレベータの待ち時間、ゴミの回収、清掃とチェックインの時間調節など、さまざまな問題を解決しつつ収益を確保していくゲームです。シムシティなどが好きな人はいいかもしれません。で、N氏から「電車の中でやったほうがいいよ。集中できるから」と不思議な薦められ方をしていた。

わたしは携帯ゲーム機は電車の中ではやりません。なのでもっぱら家でやっている。非携帯ゲーム機である。ステージ1のマンション編をクリアした。その直後、住民を起床させてバスで移動させるイベントが急に発生した。このイベントは、まったく必要性がない。おそらくDSのマイクと音声認識技術を使えばこういうことができる、そう言いたいがためのイベントなのだろう。

今までこのゲーム中でマイクなど使ってなかったのに、そのときだけ大声でマイクに向かって「バスが来たぞ!バスが来たぞ!」と叫ばなければならない。それをしないと今まで何時間もかけてやってきたゲームが無意味になってしまう恐ろしい仕掛けである。失敗しても先には進めるが、ちょっと嫌な気分になるのでやらざるを得ない。大声で10回ほど叫んでようやく認識してくれた。これは電車の中でその場面が来ていたら大変だった。

突然、おっさんが電車内で「バスが来たぞ!バスが来たぞ!」ってDSに向かって叫び出したら、完全に頭おかしい。怖がられる。写真撮られてブログかツイッターにさらされる。さらした人のブログが炎上する。わたしもさらした人も個人情報を特定され、いろいろあって仕事を失う。不幸な未来しか見えない。被害妄想がとまらない。そんな「ザ・タワーDS」あなたもやってみませんか。どんな薦め方か。

PC版やゲームボーイアドバンス版のザ・タワーSPのほうが評判が良いので、そちらの方がいいかもしれません。このゲーム、電車内でやると集中できていいです。

▼会社で隣席のTさんが取引先のブログを更新していた。新商品などが開発されると、そのブログで消費者向けに発表しているらしい。その宣伝文句が気になった。「職人が心をこめて一つ一つ焼いています」というものである。まあ、そういう宣伝はよくありそうである。

そもそも心とは何か。心が入っていて美味しくない物と、心が入っていなくて美味しい物ってどちらがいいのだろうか。「心をこめて焼いてます」ということは、それ以外の商品には心が入っていないのか。同じ商品でAパン(心入り)150円、Aパン(心なし)100円という売り方もありなのでしょうか!ありなのでしょうかねえ!そもそも心ってなに!?教えて!って言ったら、「めんどくさい人、出たー!」みたいな顔をされた。

どんな仕事でもプロはそれ相応の努力をしている。だからわざわざ「心をこめた」とか「気持ちが入っている」とか言う必要はない。どれだけ努力しているかなどは、プロの仕事では言わないのが当たり前で、その先にある結果が求められるのだろう。

だから、わざわざ「心をこめた」とアピールするのはちょっと違うのではないか。それをTさんに伝えると、「じゃあ、新商品食べたんだし、宣伝文句考えてくださいよ」と言う。わたしはあまり心や気持ちを前面に出さないほうがいいと思うのだけど。

「一つ一つ心をこめたとか、そんなうるさいことはわざわざ言いません。言いませんがやっていないわけじゃなく、それなりにやっています。見えないところでやっています。そういうのは、あえて自分から言わないみたいな。それが美学。職人が見えないところで努力して、なんでもないふうをよそおって作った商品です。買ってねー!」

「そんなんで売れるか」

ごもっともです。心をこめて一つ一つ焼いたって書けばいいと思います。