玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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雪見大福

▼会社で残業していた。少しややこしい問題があり、それを片付けてしまいたかったが思ったように進んでいなかった。そこに「緊急」という件名のメールが来たので、作業を中断して開いてみた。

「雪見大福買ってきてくれたら、チュ~( ̄3 ̄)してあげる」

差出人を見るとYさんからだった。Yさんは、わたしに作業を委託している会社の男性である。おそらく、彼女に送るメールを間違えてわたし宛に送ったのだろう。そして、わたしはYさんから委託された作業を終電までに終わらせようと頑張っている最中だった。退社後に誰が何をしようと自由だし、わたしが仕事をしている間、Yさんが楽しくやっていようとそれは関係のない話である。

Yさんから続けてメールが来た。

「すみません。彼女に送るつもりで間違っちゃいました><」

こういう間違いメールには「社内全員に転送しておきますので覚悟してください」とか「今から雪見大福買って行くので待っててください」などと、冗談ぽく返すのがマナーだろう。

「了解です」とだけ返しておいた。こうやって事務的に返されたほうがダメージが大きい。恐るべき性格の悪さ。悪意が生み出した怪物、それがわたしなのです。

ブルーハーツの「1000のバイオリン」を聴きながら帰った。この曲を聴くと、今まで悩んでいたことなんて実はどうでもいいことだったんだと気づかせてくれる。くだらないことに捉われないで、どんどん前に進もう。そういう気分になる。Yさんのことも笑って許せる。Yさんと彼女が幸せな時間を過ごせればいい、それが僕の幸せなのです。

ウソである。

「世界中の雪見大福、売り切れてればいいのにな~♪ それが僕の幸せ~♪」という自作の歌を歌いながら帰った。猫の額より心が狭い怪物、それがわたしなのです。