玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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続小学生日記

▼部屋の片付けをしているときに出てきた小学校時代の日記を読んでいる。
子どもながらに外側からの目線が多いということに感心している。運動会の全員参加のリレーについて書いた部分が興味深い。

「ぼくは全員参加のリレーに期待しました。
女子のじゅん位はあまりよくなかったので男子にがんばってもらおうと思いました」

おまえはがんばんないの?と思う。
自分は参加しない、とでもいうようなひとごと感は何か。もちろん全員参加のリレーなのでわたしも走るはずである。さらに、

「N君、S君、K君、T君やそのほかの人もがんばっていました。最後に青のアンカーがぬきました。運動会は負けたけど、とてもおもしろかったです。
来年は勝てるといいですね」

どうだ、このひとごと感。わたしががんばったかどうかは一切わからない。がんばってないでしょう。がんばっているわけがない。そもそも、わたしはこのクラスに所属していたのだろうか。いや、この学校に通っていたのか。通っていたという自信がない。もしかして先生か保護者だったのかもしれない。だって、あんな外側からの日記だしな。

▼またある日は工作について書いてある。
どうやら夏休みの自由研究で、木で鳥の巣箱を作ろうしている。上記の外側からの日記の人に比べると、なんて主体性にあふれた取り組みだと、その成長に目頭が熱くなります。

「次の日五時ごろ、くぎを打っていたらぜんぜんうまくいかなくて『今日は気が乗らない』と言って、明日やろうと思いました」

どうでしょう、この巨匠っぷり。おまえ、どうせヒマなんだからその日のうちにやれよと思う。このあとにですね、鳥の巣箱が大変なので船に計画を変更。船を作ろうとしたら板が真っ二つに割れてしまい、船をあきらめて戦車に変更する。その戦車というのが、大きい板に小さい板を乗っけてボンドで接着し、その小さい板のほうに釘を打ち込んで砲塔にしたという、とんでもない手抜きである。制作時間5分以下である。板を重ねて釘を打っただけの物を戦車と言い張って提出した。

日記の最後はきれいにまとめている。

「いろいろたいへんだったけど戦車が完成しました。うれしかったです」

うそつけー!
あきれるわー。ロクな大人にならんな、この子は。
ほっといてください。

▼映画「理想の女」 / 2004 西・英・伊・米・廬森堡(ルクセンブルク
ルクセンブルクって「廬森堡」のように表記するんですね。五カ国合作映画というのも珍しい。

劇作家オスカー・ワイルドの「ウィンダミア夫人の扇」(1893年刊行)が原作である。原作は19世紀末のイギリスが舞台だったが、時代は世界恐慌(1929年)のあたりに、場所は南イタリアの避暑地アマルフィにうつしかえられた。

避暑地に集まった上流階級の人々は噂好きで嫉妬深い。あっちで誰と誰がくっついたとか、誰が不倫してるとか、社交界はそんなゴシップに満ちている。そんな社交界を皮肉たっぷりに見つめた作品である。この映画は好き嫌いが大きくわかれそうだが、それは時代がかった大仰な言い回しを許せるかどうかだと思う。

女「あの女はアバズレよ。女の敵だわ!」
男「たとえそうだとしても、それが男の敵とは限らないな」

男「あの女は君の財産だけが目当てだ」
男「わたしも彼女の美貌だけが目当てだから、おあいこだろう」

「愛は永遠だというが、現実にそれを目にした者はいない」

ちょっと言い回しは違うかもしれないが、概ねそんなことを言っていた。少しひねくれたやり取りが劇中のいたるところで展開される。ストーリーはたいしたこともないので、この会話を楽しめるかどうかである。期待しないで観たということもあって、とても楽しめた。主演のスカーレット・ヨハンソンも魅力的だし、脇を固めるヘレン・ハント、そしてトム・ウィルキンソンも好き。

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