玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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4分33秒

4分33秒という曲についての説明がwikipediaにあった。

「この曲は、音楽は音を鳴らすものという常識を覆す、『無音の』音楽である。~中略~いわゆる『無』を聴くものというよりも、演奏会場内外のさまざまな雑音、すなわち、鳥の声、木々の揺れる音、会場のざわめきなどを聴くものとされている」

ようするに4分33秒間、誰も何も演奏しないのである。そして曲(というのかわからないが)は終了する。

しかし、これはどう考えたものかと思って観ていた。これを「面白い」とか「粋である」とか評価するのが正しいのかもしれんけど、えー、ちょっとどうなんだ、これは。これ本当に面白いのか。面白いといっている人は無理をしていないだろうか。

美術館に行ったら、何も描かれていないただの紙が並んでいたり、お腹を空かせてご飯を食べに行ったら、空の器が出てきても困る。そこでウェイターから「さあ、笑って笑って。これに怒り出すなんて粋じゃないですよ」みたいな態度を取られても、そんな気分にはなれない。どちらかというと「俺は今からお前達を殴る!歯をくいしばれ!」みたいな気分になる。暴力教師である。

観終わって、何がそんなに引っかかったのか考えると、この試みそのものではなくて、観客の態度かもしれない。立ち上がって拍手したり、口笛を吹いたり、いかにも「こういうユーモアわかります!」という態度である。うすら寒い。この4分33秒の間に席を立って帰るのもありだし、そのときに立てる音さえも演奏の一部と言い張ることすらできる。なんだかもう、言ったもんがちの世界である。それをわかんないと「無粋」とか「バカ」とかにされてしまう。それがなんだかしゃらくさい。

だが、僕がもっとも嫌だと思ったのは、あの場に僕がいたら他の観客たちと同じ態度を取るからである。それが目に見える。そのみっともなさを見せつけられているようで居心地が悪い。正しい反応としては、オーケストラ全員を右端から順番にぶっ飛ばしていくことだと思いますが、それは完全に頭おかしい人なので、そーゆー人は逮捕されるといいと思います。おわり。

▼実は、こういったちょっとふざけた試みというのは好きです。演奏会のすべてを無音でやられると暴れますが、ごくごくたまに一曲だけこれを挟んでみるというのはありかもしれない。こういうのって一度だけやるからいいと思うのだけど。

wikipedia4分33秒著作権問題について記述がありました。

イギリスの作曲家であるマイク・バット(Mike Batt)がThe Planets というグループのアルバム Classical GraffitiにA One Minute Silenceという1分間の無音の曲を入れた。作曲者をBatt/Cageにしたところ、4分33秒の楽譜を出版しているEdition Petersから著作権侵害を理由に民事訴訟を起こされる。

この訴訟は、訴訟外でバットが6桁の和解金を支払うことで解決したとあります。この6桁がドルかポンドかユーロかわからないですが、和解金は何千万という金額になっていそうである。これは4分33秒の作曲者ジョン・ケージの死後のことですが、これで訴えたらいかんだろうと思いますけど。終生貧しく、どこへ行くにもボロボロの普段着で出かけたというジョン・ケージはなんと言うだろう。この曲でごちゃごちゃ揉めるなど、それこそユーモアに欠ける。

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