玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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坊主

▼ちょっと仕事でミスがあり、そのお詫びに取引先へ。

今回は、わたしのミスではなかったが誰にも起こりうることだった。一緒にお詫びにいったYさんは、ずいぶん恐縮し反省していた。先方も気にしておらず、お詫びはすぐに済んだ。Yさんが話があるというので、打ち合わせ後に喫茶店に寄った。Yさんが、重々しく口を開く。

「さっきは、すみませんでした。明日、罰として坊主にしてきますんで‥‥」

えー?いまどき坊主って。

ザ・昭和か!昭和の体育会系か!と思ったが、Yさんはすこぶる真面目な表情である。反省もしてるし、同じミスが出ないように対策もしている。「いや、坊主にする必要はないですよ」と言ったのだけど、それでは気持ちがすまないから坊主にするという。

いやあ、もう、なんか怖い。わたしがミスしたら「坊主にしろ!」とか言いそうじゃん。言うでしょ。このわたしの美しく長い黒髪の危機である。光ってますか、天使の輪。毛先15センチでカワイイは作れるんやで!

かましいと思います。短い髪のおっさんのくせに。

Yさんと別れた後、ちょっと心配になった。彼が坊主にするのはかまわない。だが、彼がこの先部下を持ち、その部下がミスをしたときに坊主を強要しないだろうか。指を詰めろとか言い出さないか。そういう無理強いだけはしないよう言っておいたほうがよいかもしれない。

翌日、Yさんがわたしの机にやってきた。「昨日はどうも」なんて言いながら、頭をかいている。

「どうです?似合ってますか?」

あのですね、坊主っていうと、つるっつるの丸坊主かと思っていました。それか、スポーツ刈りとか。ちょっと前にベッカム選手がやっていた、真ん中が少し高いオシャレ坊主になっとる。えー、そーゆーのありなの?反省とかいって、ファッショナブル坊主って。「似合ってますか?」って、似合ったらまずいだろう。反省なんだから。

隣のTさんが言うには「あの人、ミスるといつもアレだよ」ということだった。じゃあ、それは、ただの散髪ということでよろしいでしょうか。誰か、バリカンをー!ワシが本当の坊主というのを教えちゃるけんのう、と思いました。