▼吉田豪が、元アイドル16人に行ったインタビュー集。
「美人は得」という言葉をたまに聞くけど、本当にそうなのかな？ということを考えていた。能力とは、目的の達成を考えたときに、はじめて得とか損とかいえるのだろう。
美しいという能力は、芸能界に入りたい人にとってはいいだろうが、入りたくない人にとってはスカウトに声をかけられたり、ストーカーに追い回されたり、損かもしれない。美しさが他の能力とどう違うかといえば、隠すことができないという点にある。
むしろ、現われているそのものが能力である。運動能力や頭脳は人に見せずにサヤに納めることができるが、美しさは抜き身の刀を持って歩いているようなものである。ときにその刃で人も自分も傷つけてしまう。
そういった抜き身の刀を持った人たちのインタビュー集がこの「元アイドル」である。芸能界の裏話が、いろんな番組名などもわりと実名で書いてある。わたしは芸能ゴシップ関係はさっぱりなので、詳しい人には当たり前かもしれないですが、いろいろと驚かされることが多かった。
事務所の力や金で歌謡曲の賞を獲らせるのは当たり前だし、人気が落ちればだまして脱がしてしまう。目の前でADがぶっ飛ばされても、カメラが回っているところでは笑顔でいなければいけない。ここに出てくるアイドルのほとんどが人間不信に陥っているし、自殺を考えたという方もいる。
だが、美しさという妖しげな刀の魅力に溺れない人や、溺れたけれども使い方をおぼえたという人もいる。そこで溺れずに楽しさを見つけられる人もきっといるのだと思う。芸能人になりたいとか、憧れるという人は、ちょっと読んでみると面白いかもしれません。これを読めば、誰も芸能界に入ろうとは思わないかもしれませんが。アイドルという職業は、刀一つで芸能界という魑魅魍魎の魔界をさすらう剣士に見えてきました。
▼今日のカラス話
古代ローマの博物学者プリニウスによると、ワタリガラスが瓶（カメ）にたまっている水を飲むために、瓶に小石を落として水位をあげて飲んだそうです。カラス、頭いい！
