▼友人に頼まれ、本を売りにいった。昨日は、話が動物占いのほうにそれてしまい、まだ本屋に着いてないのである。二日にわたって語られる壮大な話ではないのだけど。ともかく、本屋に行った。
買い取りカウンターには、先客がいた。長身でちょっとホストっぽいかっこうで、どことなく東幹久に似ている。彼は、カウンターの店員に本が入った袋を渡しながら、首と肩の間に携帯電話を挟んで話している。どうやら、話し相手はパチンコ仲間らしい。
「軍資金は出来ましたから、これから勝負いきましょうよ。
女の本、売っ払ったら、けっこう金になりそうなんで。
大丈夫っす!大丈夫っすから!
なんつうか、手をつけちゃいけない金に手をつけてからが、本当のギャンブルみたいな?
これ、名言でしょ?
マジで、今から俺の伝説、始まっちゃいますよ」
いや、あんた、人間として終わりかけとるで、と思いました。
▼映画 あなたに降る夢 / 1994 米
映画を観ると、実話に基づいた話となっている。喫茶店に立ち寄った警官チャーリーは、その日たまたまチップの持ち合わせがなかった。しかたなく、ウェイトレスに「この宝くじが当たったら、その半分をチップとして渡す」という口約束をする。その宝くじは的中し、チャーリー夫婦は400万ドルを手にすることになる。しかし、正直者のチャーリーはウェイトレスとの口約束を守り、半額の200万ドルを彼女に渡す。
チャーリーの行為が美談として語られ、彼の妻は劇中ではケチな悪人として描かれている。しかし、奥さんの扱われ方がかわいそうな気もする。せっかく当選した宝くじを、どこの誰だかわからない女性に半分あげてしまうという。その他にも夫は、駅で地下鉄の入場料を「今日は俺のおごりだー」と、見知らぬ人たちに配ったり、警官未亡人の会に1万ドル寄付したりする。
そして、夫婦間が冷え切っていたとはいえ、チャーリーは賞金の半分をあげたウェイトレスと浮気をしてしまう。そりゃ、奥さん怒り狂いますよ。いや、これ一方的に悪人として描かれてるけど。うーん、どうなんだろう。まあ、実話に基づいているとはいえ大幅な脚色がされているのだろうから、本当のところはよくわからないのだけど。
一箇所、とてもリアルに感じられたシーンがあって、宝くじ販売所の場面である。くじを買おうと行列している人たちがいる。チャーリーもその行列に並ぼうとする。しかし、相棒の警官がその行列に「おまえら、ちょっとどけ」と、横入りして買おうとする。なんだか、その横暴さがみょうにリアルだった。そこがもっとも印象に残った。