玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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かわいくて賢い嫁

▼今、お邪魔している会社にFさんという話し好きの男性がいる。

彼はよく「うちのかわいくて賢い嫁が‥‥」と奥さんの自慢をしていた。自分からそういうことを言うかと苦笑混じりに聞いていた。しかし、周りの様子がどうも冷たい。皆、ほとんど聞いていない。もしくは、死んだ魚のような目で聞いている。

ちょっとかわいそうなのではないか。のろけ話ぐらい適当に聞いてやればいいじゃないか。そのFさんが居ないところで、Tさんから「嫁って、猫のことなんですよ」と苦々しそうに言われた。なるほど、たしかに猫を嫁というのはちょっとなあと思う。しかし、同僚なのにみんな少し冷たいんじゃないか。そう思ってFさんの話を聞いていた。皆が聞いてくれないから、わたしのところによく来る。

1時間に1回は来てくれる。鶏のささ身が大好物というのは10回以上聞いた。椅子を爪研ぎ代わりにして困るというのを20回以上聞いた。

そりゃ、こんなに同じ事聞かされたら死んだ魚のような目になりますわ。

Fさんの嫁の話に適当に相槌を打ちながらも、モニタから視線をはずさずにキーボードを打つようになっていた。その様子を見ていたTさんが「うちの会社になじんできたね!」と言った。

そういう基準か。迷惑です。