玉川上水日記

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少し変わった子あります / 森 博嗣

森博嗣の本を何冊か読んだ。

ミステリーといえば当たり前のように人が死んでいた。少し前からその当たり前とされてきたものが、変わってきたのだろうか。

いまだにテレビの2時間ドラマでは人が死んでいるだろうし、映画ではバラバラ殺人などはよくある。それは謎を作るための装置みたいなもので、もうそこに魅力を感じなくなっていた。これは僕が歳をとったことと関係があるのかもしれないけど。

これは皮肉でもなんでもないが、犯人が奇抜な殺し方をしようとするとちょっと応援する。例えば、首なし死体をどーたらこーたらして恐怖心を煽る演出をするとか、その土地にまつわる伝説に見立てて殺すとか、その演出をほどこしている最中に誰かに見つかってしまわないか心配している。うまくやり遂げて!と、初めてのおつかいを見守る親の心境である。犯人の頭をいい子いい子してやりたい。

しかし、正直にいえばどんなに奇抜にしようとも「謎=人の死」という図式にもう飽きてしまったのかもなあ。

で、ここ最近読んだ森博嗣の本は人が死ななかった。人の死という装置を使わなくても、思考の面白さと軽めの謎で最後まで楽しく読めた。死んで面白くなるなら死ねばいいと思うけど、死ななくても面白いなら死ぬ必要はないのだろう。

この本には大仰な仕掛けやトリックは存在しない。星新一を思わせるような不思議な雰囲気があった。

「読み手によってはまったく面白くないかもしれず、しかし読み進めれば人によってはいくらか役立つ知見は得られるだろう。その点、読み手を選ぶ高度な作品といえよう」

森博嗣ならばそんなふうに評しそう。だいたい森博嗣の本はみんなそうである。

▼とはいえ、やはりミステリーといえば天才的な探偵や犯人がいてこれでもかという大袈裟で心躍るトリックを期待している。まだどこかでアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」や島田荘司の「異邦の騎士」などを読んだときの興奮が忘れられない。

中学生の頃「そして誰もいなくなった」を読んで、あまりの面白さに親に「この作家はなかなかいいよ!この作家はいい物を書く!」とか薦めていたから恐ろしい。知らなかったとはいえ、ミステリーの大家に向かってこの上から目線はさすがである。何様でしょうか。俺様ですね。 

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