玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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ヤマモトさん

▼以前に、N氏と制作・運営をしたソフトがある。そのソフトの使い方をおぼえてもらうため、納品先の会社に通っていた。とはいっても、週3日で1日2時間程度である。それも先週で終了した。

終了したので悪口が書ける。これで好き放題書けるというもの。

この会社のヤマモトさん(仮名)という20代半ばの男性社員に教えることになった。本当は、モトヤマさんだけど本名出しちゃうと悪いから。モトヤマに悪いから。

この人、人当たりもいいし覚えも早いのだけど、なにせ遅刻する。9時に会社に行きますね、するといない。わたしはヤマモトさんに教えるために出社しているのだから、やることがない。みんな仕事してるし、youtube観たりブログ読んだりするわけにもいかない。後ろを人が通るたびに難しい顔をして資料を読みふけってるフリをしたり。あれか、手持ち無沙汰の新入社員か。誰か仕事をください。

あ、電話かかってきた。3回鳴ってるよ、ほら、出ないと‥‥あれ、みんな他の電話に出てる?

で、出るか、一番ヒマなのわたしだし。

「はい、○○(会社名)でございます」

思い切って出てみたら、ヤマモトさんだった。

「あれ?なんで電話出てるんですかー。おもしろい!」

おもしろがってる場合か。人が通るたびに、意味なくエクセル開いたり閉じたりしてんのは誰のせいだ。

そんなヤマモトさんだが、上司への遅刻の言い訳はなぜかパチンコ屋が関係する。どうやら彼の家の近所にパチンコ屋があるらしい。パチンコ屋に行列していたので、その行列をよけて駐車場から車を出すのに時間がかかったとか、パチンコ屋がうるさくて前日にあまり眠れなかったとか、社会人としてちょっとどうなのかという言い訳ではある。

今回の電話も、パチンコ絡みの言い訳だった。普通に体調が悪いとかじゃ駄目でしょうか。そんなわけでパチンコ屋を逆恨み気味に憎んでいるヤマモトさんであった。

会社の雰囲気は実にのんびりしていて良かった。女子社員がお菓子を交換してキャーキャー世間話をしたり、なんだかこういうの懐かしいなあ。

そういうことをヤマモトさんに言うと「女の子と話せばいいじゃないですか」と言うものの、仕事でもなく他の人の時間を取ってはいけないと思うし、それは気が引ける。その会社にこれからずっといるわけでもない。

次の日、教え終わって休憩していると女子社員がやってきた。

「あの‥‥今まで気づかなくてすみません」と言うと、チョコを一箱くれた。良かったら一つどうですか?じゃなくて、箱ごとである。ポカーンとしているわたしを残して、女子社員は去っていった。

あれ?ヤマモトさん、何かへんなふうに伝えてない。ひょっとして「あの人がすごくお菓子欲しがってた」とか言ってないか。いや、仕事に飽きたときにちょっと話せる人がいると気分転換になっていいよねぐらいのことは言った。

でも、お菓子がほしい!箱ごと欲しい!とは言ってない。

大人だから。

食べたければお菓子は買うよ。

ヤマモトわかってないわー。伝えかた違うわー。

お菓子をすごく食べたい人と思われてる。恥ずかしくなって汗が出てきた。

喫煙所にいるヤマモトがガラス越しにこちらを見ている。わたしの視線に気づくと、2回小さくうなづいて、親指をグッと立てた。「俺、よくやっただろ?気にすんなって、いいからいいから」みたいな感じである。

違うからね!お菓子が欲しくてしかたがないとか、言ってないから!

CRヤマモト!根本的に間違ってるぞ。おまえ、いつか仕事ででかいミスをする。

でも、チョコは美味しくいただきました。皆様、お気遣いありがとうございます。楽しかったです。