玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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トイレの花男さん(とくに呪われたりはしない)

▼魚偏に師走と書いて鰤(ブリ)である。

ブリの美味しい季節になりました。ブリとかハマチとか大好きだ。生まれ変わったらブリになりたいぐらい好きだ。食われてしまう。

ブリの刺身を買いに魚力に寄った。ついでにお手洗いに立ち寄る。

そこには、小学校低学年ぐらいの男の子と、その父親がいた。子どもがトイレの個室に入り、父親は個室の外で待っている。しばらくすると男の子の興奮した声が個室から聞こえた。

「お父さん!お父さん!『トイレットペーパー以外のものは流さないでください』って書いてある!ウンコは?ウンコはいいのー?ウンコはー?」

「いいから早くしろよ」

父親は恥ずかしかったのか、小さな声で答えるとトイレを出ていってしまった。男の子はそのことに気づかず面白がって「ウンコはー?ウンコはいいのー?」と、しつこく聞き続けている。父親の返事が聞こえないことが不安なのか、だんだん声が小さくなっていく。

わたしは、この先どうなるんだろうとその場に留まっていた。しばらくして、まったく関係ない男が急いだ様子で入ってきた。我慢していたのかもしれない。慌しい様子で小用を足していると、男の背後の個室から男の子のか細い声で「ねえ‥‥ウンコ‥‥ウンコ‥‥」と聞こえた。男はびっくりしたのか「オゥッ!?」と変な声をあげて、わたしのほうを見た。今何か聞こえなかったか?という表情で。わたしは、さぁ?聞こえたような聞こえないような‥‥という表情で首をかしげてみた。

男は気味悪そうに足早にトイレを出て行ってしまった。わたしも男の後に続いてトイレを出た。父親は廊下で携帯電話をいじっていた。

トイレの花子さんとか、こういう形で広まるのかもしれないとみょうに感心した。広まると楽しいなあ。

本当にあったまったく怖くない話を書きました。

あなたもトイレの個室から「ウンコ‥‥ウンコ‥‥」という声が聞こえたら、ほっといてあげましょう。もしくは「流していいよ」と返事をしてあげてください。どう答えても呪われません。正体はアホの子なので、そっと見守りましょう。