玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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「名所」と言い張っている

▼友人来訪。飲み物がなかったので近くの百円ショップまで連れ立っていく。店内を巡回するが、わたしの目当ての店員はいなかった。最近とんと見かけない。もう辞めてしまったのか。

以前、一度日記に書いたがこの百円ショップにはちょっと態度の悪い店員がいた。「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」などの挨拶をしないのはもちろんのこと、レジで合計金額を言わない、やたらにため息をついて面倒くさそうにする、たまに舌打ちする、レシートを渡してくれないなど、こちらが何かしてしまったのではないかと心配するぐらいである。

サービスを良くすると、寿命が縮む奇病にかかっていたに違いない。「ありがとうございました」と言うたびに寿命が1日ずつ縮んでいく。

わたしは友人が家に来ると、近くのコンビニではなくわざわざその百円ショップまで買い物に行っていた。買い物を終え、店を出て友人が不思議そうに言う。

「あの店員なんか感じ悪かったなあ‥‥」

「そうでしょ!あれがわが町の名物『態度の悪い店員』です!

特技は、客に『この弁当あっためんの?』とタメ口!」

そう紹介するのが楽しかった。

なのに、彼はもういない。ああ、彼はどこに。

ひょっとして引き抜きだろうか。態度の悪い店員だけを選りすぐって集めた、エリートやさぐれショップに引き抜かれてしまったのか。どこなんだそれは。

肝試し感覚で、一度行きたい。

わたしにとって、この店は彼の存在でもっていたのに、もう行く理由がなくなってしまった。

まあ、前より繁盛してるけど。よかったですね。