「僕が犯罪者でなくてロンドン市民は実に幸せだよ!」
▼仕事打ち合わせ。N氏宅。
お手洗いを借りた。部屋を出るときにN氏から、洗面所にホームズ(猫)がいるかもしれないけど気にしないでくれと言われる。
用をたし手を洗おうとすると、丸々と太った三毛猫が洗面台の中に横たわっている。この暑さなので洗面台の冷たさが気持ちいいのだろう。
ホームズというと、痩せ身で蒼白い風貌のちょっと神経質な皮肉屋をイメージさせるが、このホームズはふてぶてしすぎる。ホームズというより笑うセールスマンの喪黒福造みたいである。
わたしにとってホームズはジェレミー・ブレットのイメージなんだけど、ちょっと違うなあ。
こちらが洗面台の蛇口をひねろうとすると「キシャーッ!」と威嚇する。どかそうにも、どいてくれない。
ホームズに水がかからないようにそっと蛇口を開け、手を洗う。そして、蛇口を閉めようとするのだが、先ほどより激しく威嚇するものだから蛇口が閉められない。ホームズは水が出ているのが気に入らないのか、ますます怒っている。だから、蛇口を閉めようとするがそうするとまた激しく威嚇する。
あれか、君はホームズなのにバカなのか。
引っかかれてもいいように、洗面所のタオルを手に巻いて蛇口を閉めた。
水が止まると、はじめから何事もなかったかのように洗面台に横たわった。
そもそも、縄張りに入ったわたしが悪かった。
しかし、ホームズというより、どちらかというとホームズの宿敵モリアーティ教授だ。気性が激しいし、ホームズとの対決で滝に落ちたから、水が嫌いなのではないか。
ちなみにもう一匹の猫の名前はディープ・インパクトである。それ、馬だし。
統一感というものがなあ。ホームズなら、ワトソン、レストレード、マイクロフトあたりがあるのに、よりによって馬か。あれだな、馬なら銀星号事件のシルバー・ブレイズというのもありかしら。
なにこのホームズ好き好き日記みたいなのは。
▼どの子もかわいいが、うまいこと主張できない茶トラがかわいい。