玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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散髪

▼出先にて散髪。

ずいぶんと髪が伸びていた。

行ったことのない場所で、普通はいきなり飛び込めないのですが、店の雰囲気や価格がかなり安かったので入ってみた。

お客は、私の他に若い男性が一人いるだけだった。

彼はおもむろに雑誌を取り出し、ページを店員に見せ「ここはこんな感じで‥」などと細かく指示を出し始めた。

なんという剛の者であろうか。カット料金1000円の床屋で。まあ、1000円だから指示しちゃダメということもないけど。

あの心臓の強さがわたしにはない。

たとえ、その雑誌のとおりに切ってもらえたとしても、残念なことに顔面は客の持ち込みなので、雑誌のカットモデルとはちょっと違う出来になると思う。

ちょっと違うぐらいならいいが、たいていは大幅に違うことになるのではないか。

文句を言おうにも、顔面は客持ちであるので、そういうわけにもいかない。スゴスゴと床屋を後にする悲哀に満ちた背中が目に浮かぶのだった。

雑誌を持っていって「こんな感じで」なんて言えたら、わたしの人生ももうちょっと華やいだものになっていたはずである。

なんだか大袈裟な話になった。

▼で、料金が1000円なので洗髪はない。仕上げは、掃除機の先っぽがない筒状のものでゴーッと髪の毛を吸い取られるのである。あれがひじょうな恐怖感であった。

猫が掃除機を恐れる理由がわかった気がする。

わたしも、猫に掃除機をかけるのはやめようと思う。飼ったことないが。