▼雨も降っていてやけに寒い。
雨の日は学校までバスで通っている。バス停に抜ける階段を降りようとしたところ、キスをしているカップルが見えた。
内心「うわー!うわー!」と叫んだ私だ。
しかし、もうキスごときで動揺してはいけない歳である。彼らの邪魔にならないよう、うらやましいからなるべく見ないよう視線を逸らして通り抜けないと。
そう思った瞬間、階段を踏み外して、ダンッ!ダンッ!ダンッ!と、派手におしりから滑り落ちた。キスをしていた二人も、音に驚いてこちらを見る。そっと通り抜けるどころか、思いっきり邪魔をしてしまった。
カップルの男のほうが助け起こそうと駆け寄ってきてくれた。
「いや、大丈夫です。大丈夫ですから」そういって顔を上げたとき、その男の肩越しに、ものすごく怖い顔でこちらを睨みつける女と目が合った。怖くて石になるかと思った。
ごめんて。
邪魔して、ほんとごめん。
でも、そんな怖い顔で睨まなくてもいいじゃないですか。
わたしはねんざしたんだし、痛み分けということで。