▼HERO 劇場版
水戸黄門のような勧善懲悪の物語だった。それにしては悪役が今ひとつ薄かったように思う。キムタク演じる久利生検事の姿勢に感化されて、すぐに更生してしまう敏腕弁護士(松本幸四郎)。悪役なのに、命も狙わないわ、脅迫もしないわと、怠慢が目立つ花岡代議士(タモリ)。
脚本の問題なのだろうけど、勧善懲悪の娯楽モノに徹するのであれば、もっと悪役を悪くしてほしかった。悪タモリが見たかった。「いいとも」で子どもを泣かすような。
▼「とにかく彼は彼のままで、どこにいても彼なので別になんでもないのだ」
読み終わって叔父のことを思い出した。
難関大学に合格し、卒業後は銀行に就職したものの、結婚する際にどうしても相手の家の家業を継がなくてはいけなくなる。そこであっさりと銀行を辞めてしまい、奥さんの実家の家業を継ぐ。
田舎ということもあり、当時は「もったいない」とずいぶんと親戚から言われたようである。私は、人のことには無関心なほうなので好きにすればいいと思ってたし、この叔父を好きだったのでそんなことはどうでも良かった。他の親戚と違って、積極的に批難はしなかったが心のどこかでやはり「もったいないかも」ぐらいは思っていた。
本当はもっと活躍できる能力があるのに気の毒だとか、夢をあきらめて奥さんの家業を継いだとか、そう思っていたかもしれない。
彼は、温和で冗談がうまくて、一緒にいて落ち着く人だった。とにかく彼は彼のままで、どこにいても彼なので別になんでもないのだ。叔父からはなんの後悔も感じられない。
このハゴロモという作品を読んで、ふとそんなことを思い出した。
と、いえばなにやら名作のようだが、万人に薦めるものでもないと思う。ただ、今のわたしには感じるところが多かっただけで、でも、それはとてもありがたい。