玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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食事会

▼富士山の中腹まで雪に覆われている。山肌がまったく見えないほどで、今年は本当に寒いのだな。富士山みなくてもわかってたけど。

 

バスに乗っていたら、本当に久しぶりに暴走族をみてしまった。まだ絶滅してなかったのだな。珍しいものをみたので拝んだ。寒いんだからバスにしとけばいいのにと思った。

 

家に帰り着いて里芋の煮っころがしと味噌汁を作る。煮っころがしは、醤油が少し焦げつくのが香ばしくてとてもいい。二か月ほど前にもらった里芋がまだ残っているのだ。里芋は美味しいし大好きだが、本当に調理に手間がかかる。皮を剥くのが面倒で、時間が経つほど皮も硬くなって一層剥きづらくなってくる。一念発起して皮を剥いた。レンジに3分ほどかけると少し剥きやすくなる。剥きまくって里芋の煮っころがしと味噌汁を作った。おいし。ああ、こんな真冬に街を走っていた暴走族の子たちにこの温かい味噌汁を飲ませてあげたい。そういうことは1ミリも考えず食べた。

 

 

 

▼この時期になると友人たちから連絡がくる。世間話をし、ボーナスの額を聞く。わたしの今年のボーナスはドングリが6個でした。リスなので。かわいい子リスなので。

 

そういう気持ち悪いことを書いていても年末はくるのだ。コロナ禍でここ何年友人と忘年会をしていなかった。久しぶりに会おうという話になるが、なんだか気が進まないので遠慮した。会わなければ会わないで平気。友人Nも「会っても昔話ばかりなのがなあ。今こういうことが楽しいとか、これに興味もってるとか、そういうのがないとなあ」と、参加しないようだった。たしかに昔話が多い友人がいる。友人Nに「もう人生をあきらめてしまって『学生時代は本当に楽しかったなあ』と同じ話ばかり繰り返すのが、負け犬の傷の舐めあいみたいで行きたくないということか?」と訊いたら「そこまでは言ってない」と否定された。

 

お世話になっている会社へ。社長に昼食をご馳走になる。総勢10人ほどで昼食をとった。そば屋に入り、何を注文しようかメニューを眺めていると隣に座った24時間くんから小声で「ちょっと高いの頼んでください。その方が僕も頼みやすくなるんで」と言われてしまう。24時間くんは体育会系の人間なので、年上の人間より高いものは頼みにくいのだろう。その気持ちはわかる。わかるが、わたしはこの会社の従業員ではなく、ただ仕事を請けている人間なので、そんなやつが社員よりも高い物を頼むのもと思ってしまう。社長が「天ぷらソバ」と注文する声が聞こえた。そうなると、鴨南蛮かかき揚げソバあたりか‥‥。決めかねていると、最年少で部屋に奇妙な虫が出る女こと虫ちゃんが元気よく「じゃあ、上天ぷら御膳で!」といったのでたまげた。場はため息ともどよめきともつかぬ不思議な空気に包まれた。

 

前の会社でも似たようなことがあったな。女の子のほうがこういうとき堂々としていて潔い。「いやあ、いくねえ」と虫ちゃんにいうと「天ぷら大好きなんで」と屈託のない笑顔を浮かべた。好きな物を食べるのが一番だな。変に遠慮して食べたくない物を食べるよりいいだろう。この会社も金がないとはいえ、上天ぷら御膳で倒産しないだろうし。たぶん。

 

 

▼映画の感想『第三の男』を書きました。映画のベスト100などでは必ずといっていいほど入っているサスペンス映画。ストーリーも平凡で、息をのむようなアクションや奇抜なトリックがあるわけでもない。それでも面白い場面はありました。オーソン・ウェルズが出ています。