玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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密告

▼仕事をもらっている会社の部長から卑屈君が3日連続欠勤していることを訊く。メールで連絡をとったらヒマそうだったので、お見舞いがてら寄ってみることに。卑屈君といえば知人のフェイスブックをのぞき見て、その生活が充実しているのを知って発狂するのが趣味の人であり、口癖は「どうせ僕なんて」でお馴染みの卑屈君である。

 

卑屈君の住むアパートは郊外の住宅地にある。周りは畑に囲まれてのんびりしたところだ。訪ねていくと退屈していたらしく嬉しそうに迎えてくれた。体調不良というのはギックリ腰だという。だが、見たところもうピンピンしているようなのだ。つらそうな様子は微塵もない。

 

つらかったのは一日目だけという。その日、彼はすることがないので目の前の通りを一日ずっと眺めていた。通りは仕事をさぼっているのか、休憩しているのか、営業車が何台か停まっている。営業車のたまり場みたいになっているという。卑屈君は買い物に出た際にナンバープレートを撮影し、社名を記録して、その会社のサイトにメールで告げ口するのが趣味らしい。こ、こえー。なんたる性格の悪さ。「刑事コロンボみたいでしょ?」というが、そこまで陰湿でヒマなコロンボがいるか。もっとマシな事件を捜査している。

 

二日目もまだ腰に違和感があったので大事をとって休んでいたという。夕方にコンビニに買い物に出た際、郵便受けを見ると「告げ口してんじゃねえ」という荒々しい筆跡のメモが入っている。なぜバレたのか、謎。ここで卑屈君の闘志に火がつく。腕力を使わないケンカはオタクの真骨頂である。三日目も休みをとって双眼鏡で朝から通報業務に励み、すべての営業車を駆逐したと胸を張る。

 

「逆切れとか図々しいと思いません? 仕事サボってスマホ見たり漫画読んだり大バカ野郎ですよ!」

 

おまえが大バカ野郎だわ。密告するために会社休むなんてどうかしている。だが、どうかしているのが卑屈君なので通常運転なのかもしれない。平和。

 

 

 

ping pong carnival

ものすごい技術。すごいのに、そんなにすごく見えないのもすごい。

 

 

 

▼映画の感想「鬼畜」書きました。松本清張原作の児童虐待についての映画。岩下志麻さんががんばっていました。虐待方向に鬼の形相でがんばっていた。恐ろし。