玉川上水日記

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映画「最強のふたり」

最強のふたり
Intouchables / 2011年 / フランス / 監督:エリック・トレダノ / ドラマ


【あらすじ】
頸髄損傷で首から下が麻痺してしまった富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)。フィリップは自分の介護をする人間を募集していた。失業保険をもらうため、やる気もなく面接に来たドリス(オマール・シー)は、フィリップに採用される。

【感想】

障害という難しい主題をよく扱いましたねえ。障害者を心のきれいな天使みたいに撮らず、一人の当たり前の人間として撮っているのがいい。恋人を欲しがったり、性欲もある。ときに不機嫌になって周りに当たることもある。酒もタバコもやる。風俗にも行けば、スピード違反でぶっ飛ばしもする。麻薬もやる。あれ、ふつうの人より悪い人ですけど。

重い障害に苦しむ人がいれば、周りは同情して憐れむ。でもそんな態度こそが障害に苦しむ人の自尊心を傷つけるのだと思う。かといって、まったく考えないということもできない。傷つけないようにという態度が余計に傷つける。それがごく当たり前の人だと思う。

だが、ドリスは、自然体でちょうどいい距離感を保てる。これは経験や資格ではなく性格なのだろうなあ。

バカなんですよ、この人。なんだか、ちょっといい人みたくなってますけど、この人ねえ、本当は駄目な人ですよ。最初に介護の面接に来たときも「さっさとハンコ押してくれよお。でないと失業保険もらえないだろ」みたいな態度ですし。フィリップは、そんなドリスを更生させてやろうという思惑もあって採用したように見える。

そしたらドリスさんは、思ったよりもいい人だったんですよね。最初は屋敷の小物を盗んだけど。泥棒である。

みんなはフィリップを敬して遠ざけるような態度ですが、ドリスは一人の友人として扱ってくれる。首から下の麻痺に悩むフィリップが「死にたい」とヒステリーを起こせば、ふつうの人ならば困ってしまう。自分のような健康な人間が彼に何を言えるかと悩むだろう。

「そんなこと言わずにがんばりましょう」と励ますのがせいぜいである。「こんな状態で生きていても」などと思ってしまうかもしれない。ドリスは「死にたい?ようやくいつもの調子がでてきたじゃねぇか!」と元気である。バカである。バカだけど優しい。

スラム街出身で素行も悪いドリスを雇うことに周囲は反対する。フィリップは「彼だけは、わたしを対等に扱う」と反論する。人が本当に何を求めているか、見誤ることがよくある。本当の思いやりとは何かと考えさせられました。ただ、ドリスは「思いやりとは?」などというところには行かない。「俺が面白いことをやっている。だからあんたも楽しめ」というように見える。それが観ていて気持ちがいいんだろうなあ。お勧めです。


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