玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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焼きそばジジイ

楽天が優勝した。応援している中日が出ない日本シリーズというのは、ふつうならそれほど観ないのですが、今回のシリーズは全部観てしまった。久しぶりに、野球って良いなと思いましたね。

良い事と悪い事が交互に起きる面白さがあった。第六戦で二つのエラーをしてしまったロペス選手が、今シーズン負けなしの田中投手からツーランホームランを打ったり、田中投手で負けて絶望したはずの楽天が最終戦で勝利したり、ドラマチックな展開だった。

野球のことで何か面白い話でもと思ったが、ちょっと思い浮かばない。サッカーみたいに面白い歴史があればいいのに。サッカーは、対立する村同士が揉め事を解決するために始めたのが最初だと聞いている。生首を蹴って、相手の村に蹴り込んだほうが勝ちという実に野蛮な競技だった。

で、ここまで書いたところでふと心配になってwikipediaのサッカーの項目を確認してみた。どこにもそんなことは書いてないですね。おかしいなあ。確かに誰かから聞いたはずなのだが。よく考えれば、魁!!男塾みたいな話だし、こんな競技があるわけがない。ちょっと問題なのは、得意になってこの話を30人ぐらいにはした気がする。どうしよう。

ブログを作りまくって「サッカーの起源は、生首をよその村に蹴りこむことから始まったよ!」という記事を書きまくれば、あるいは‥‥、ということにならないだろうか。なってほしい。こうして都市伝説は発生するのかしら。みんなも根拠のない怪しい話には気をつけよう!などと、デマを振りまいたわたくしが。

▼友人夫婦と、友人夫婦の子ター坊(小学校4年)と秋祭りに。もう2週間前ぐらいの話を今頃書いてますが。

子供の頃によく行った公民館の秋祭りはまだ続いている。ター坊の父とわたしも、小学生の頃は毎年行っていた。祭りといっても出店が並んで音楽がかかっているだけで、特に何もない。焼きソバを売る店には、焼きそばジジイと呼ばれる老人がいた。自分で焼きそばを焼いているわけではなく、焼きそばの屋台の人間と知り合いらしい。屋台のそばで一升瓶を抱えて座り、酒を飲んでいる。

わたしがたちが焼きそばを買おうと並んでいると話しかけてくる。ロレツが回らず、何を言っているかわからない。無視していると「生意気だ。ぶっ飛ばしてやる!」と、よろよろと追いかけて殴りかかってくる。今ですと、完全に通報されるやつである。捕まると本当に頭を叩かれるので、低学年の子供には恐怖の対象だった。でも、そんな焼きそばジジイから逃げるのが面白くもあり、わざとその店で焼きそばを買うこともあった。なかには足が遅いくせに「ジジイ、死ね!」と挑発して、捕まってぶっ飛ばされる子もいた。友人Nである。

焼きそばジジイは、追っかけて来ていたのに突然我に返り「焼きそば、食うか?」と言い出すことがある。え、急に?今までぶっ飛ばす気マンマンだったのに?と、そのギャップがまた怖かった。わけもわからず、焼きそばをご馳走になったことが何度かある。焼きそばを焼く屋台の主人がとても迷惑そうな顔をしていた。焼きそばジジイは、お金も払わずに「こいつらに焼きそばやってくれ」などと言っているのだ。あの人はなんだったのだろう。

そんな思い出話をター坊父としながら、祭りの会場に着いた。予想していたのですが、台風がやってくるとかで秋祭りは中止だった。しかたなくター坊夫婦の家に戻った。しばらく談笑し、ふと気づけばター坊がいない。隣の部屋で膝を抱えて小さくなっている。どうしたのだろうと見ると、シクシク泣いている。

なぜ泣いているのか訊いてみれば「焼きそばジジイに‥‥、追いかけてもらいたかった‥‥」と言う。いや、それは焼きそば屋のサービスでもなんでもないのだけど。焼きそばジジイ、変に憧れられてしまった。あの人のことはよくわからないが、憧れるようなヤツではないと思う。一升瓶抱えて、子供をぶっ飛ばすから。

しかし、子供ってこんなことで泣くのだろうか。子供の頃のわたしも、こんなことで泣いたのだろうかと不思議な心持ちがした。