玉川上水日記

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映画「あしたのパスタはアルデンテ」

あしたのパスタはアルデンテ
Mine vaganti / 2010年 / イタリア / 監督:フェルザン・オズペテク / コメディ、ドラマ


「他人の望む人生なんて、つまらない」
【あらすじ】
主人公トンマーゾはローマに住む作家志望の青年。実家のパスタ工場を継がなければならないが、作家になる夢を親に告げられない。さらにゲイであることも言えずにいた。

【感想】
原題の「Mine vaganti」は「浮遊機雷」を意味し、転じて「何をするかわからない危険人物」のことを指す。

で、その邦題がなぜ「あしたのパスタはアルデンテ」になるのか。この邦題の付け方がねえ。「恋する」「パスタ」「幸せ」「占い」「セラピー」ここらへんを入れときゃ、仕事や恋愛に疲れた女が観るだろうという考えが透けて見える。

実際は、わたしのようなひねくれた人間が悪口を言うために観ます。おっさんが観ます。猫が胃の中にたまった毛玉を吐き出すために猫草を食べるけど、ああいう感じ。わざわざ吐きたくて、悪口を言いたくて観るんだよ!病気かしら。

以前から「漫画を実写にして駄作にした場合は死刑」というのを提唱してましたが、そこに「変な邦題を付けたら死刑」も加えたい。なんで変な題を付けちゃうのかなあ。ところがですね、予想に反してちゃんとした映画でした。

南イタリアの古都レッチェでパスタ工場を経営する一族。実家の人間は祖母(真ん中)以外は、ゲイなんてとても認められない。保守的な考えの人間も多い。田舎街ということで噂も広まるのが早い。父親は自分の家にゲイの人間がいることが許せない。こういうテーマを取り上げた作品は多いですが、コメディとの相性が良く、重くならずに観られます。

主人公トンマーゾ(リッカルド・スカマルチョ 写真右)と、共同経営者のアルバ(ニコール・グリマウド 写真中)の距離感が良かったですね。アルバはトンマーゾに仄かに想いを寄せていますが、トンマーゾがゲイだということに気づいてあきらめる。その説明には一切言葉は使われず、仕草や表情だけでアルバの気持ちがうまく表現されています。

祖母の葬儀での家族の和解場面も、やはり言葉はない。家族が静かに歩んでいく、それだけでお互いを許しあえたことが伝わる。落ち着いて、しみじみとした作品。おばあちゃんも良かったなあ。だから、なんであんな変な邦題を付けたか、それだけが問題である。

一応、わたしもこの手の変なタイトルを考えてみた。

「恋するふたりの幸せパスタ ~魔法の愛されレシピ~」

どうだと言いたいね、この空っぽ感。確実な猫草映画である。鑑賞後、一週間は文句を言い続けられる出来。ここまで詰め込むと逆に観たくなってきた。テレビ局映画で撮ってくれないかなあ。地雷映画ばかり作ってるんだし。一本ぐらい地雷が増えてもいいじゃないか!劇場で観ます!


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