玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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趣味の教室

▼わたしの母は、趣味でエッセイなどの文章を書いている。市民サークルに入っており、三十年以上も継続しているから立派なものである。なによりすごいのが、三十年書いているのにとんでもなく文章が下手である。身内だから謙遜しているのでもなく、本当にね、ちょっと感心するぐらい下手という。なにせ「、」(読点)を打たないから読みづらい。読点を打たずに十行ぐらい続く文がある。読ませたら負けだという強い心意気を感じる。

そもそも、サークルに入った動機が「友達が欲しい」というものであったため、最初の頃はまったく文章を書かなかった。そして「文章を書くのが嫌い」という人だ。なぜよりによって文章サークルに?と思う。文章嫌いで文章サークルに入れる度胸がものすごい。どこか壊れているではないか。会のほうも、そんな人間をよく受け入れてくれたと思う。おかしい人間の集まりである。

だからキャリア三十年といっても一年に原稿用紙一枚ぐらいしか書かなかったらしい。大作家である。完成まで五十年ぐらいかかりそうな話。

で、サークルも高齢化し、平均年齢が七十歳ぐらいになってしまった。ここらで若い力が欲しいということで会員募集をすることに。若いといっても「六十歳」ぐらいが若いに入るらしい。頼まれてサークル活動の紹介サイトを作りました。一からサイトを作るのが面倒なので、レンタルブログを利用して三十分ほどでできた。

作ったはいいが管理者が誰もいない。会員は誰もパソコンを使わない。メールもよくわからないので、連絡先は電話とFAX番号がそのまま記載してある。代表者の住所も記載されている。個人情報とかうるさいことを言わないのがすてきだ。むしろ積極的に発信している。ドンドン、ネットの海に発信していくのだ。

サイトを会員のおばちゃんたちに確認してもらい、いろいろと質問された。もっとも困ったのが「インターネットってなに?」である。根本的すぎる。あまりに対象が大きいと答えに窮する。人生、仕事、家族、生きる意味などを急に問われても答えられないのに似ている。答えに困っていると、別のおばちゃんが助け舟を出してくれた。「そりゃ、ワールドワイドウェブだよ!」と言う。そんな単語を知っていることに驚いた。最初のおばちゃんが「なんだい、そのワールドなんとかってのは。インターネットと何が違うの?」と訊く。

助けてくれたおばちゃんも「インターネットとワールドワイドウェブってなに?」と、わたしに訊く。質問が二つに増えた。無間地獄である。というわけで、若い力(60歳ぐらい)を今、求めております。PCができる方、インターネットってなに?とか根源的な問いをしない方を募集したい。