玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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好きな食べ物

▼震災から一年が経ちました。一年といっても通過点に過ぎないということはわかっていますが、それにしてもいろいろあったように思います。学者によっても意見が分かれ、専門知識のない人間は何を信用していいかわからない中で判断をくださなければならず、その方法について考えさせられました。また、多くの人の善意や悪意がより鮮明に見えた一年でもありました。

3月11日は震災関連の番組が多かったですが、テレビ東京だけはゴールデンタイムでも「モヤモヤさまぁ~ず2」を放送するという相変わらずっぷり。こういう局があると気が楽になっていい。「絆」とか「復興に向けてがんばろう」と言われると、それは完全に正しいし何も言えなくなってしまう。

でも、バカげた番組によって背中を押してもらえる人もいると思う。人によって必要とするものは違うから、真面目に震災を振り返りたい人もいるだろうし、バカげた番組によって活力をもらう人もいる。3月11日にあえて普通の放送したテレビ東京はありがたかった。道化師の優しさのようなものを感じたといえば美化しすぎか。たんに特番を組む予算がなかっただけかもしれないけど、それはそれでテレ東らしい。

▼友人夫婦の家で話す。

おいしかった食べ物は何か、という話になった。わたしの印象に残っているのはメロンのシャーベットである。たしか帝国ホテルのパーティーか何かのお土産だったと思う。メロンが丸々一個冷凍されていて、その中身をくり貫いてシャーベットにしていた。

で、みんなして寿司だ、ウナギだ、ステーキだ、フォアグラか北京ダックなどと言っておりました。すると、友人夫婦の子ター坊(小学校二年)が「遠足の日の、おかあさんのおにぎりかな」と言いました。

あのー、なんですか、そういうのずるくないか。ずるいです!思い出とか状況を乗っけてくるのはずるい!そんなこといったら、祭りの焼きソバとか、彼女と朝焼けを眺めながら飲んだコーヒー(そういう思い出はない)とか、サハラ砂漠で道に迷い、やっとの思いでたどりついたオアシスの水とか、そんなんでいいでしょ。反抗期で口もきいてくれない息子が、わたしが寝込んだときに作ってくれたオカユでもいいわけでしょ。

そしたら友人が「さっき帝国ホテルのシャーベットとか言ってたヤツ誰だ」とバカにしたように言う。だってあれは思い出とか乗せる前の話でしょうが。人をそんなスネオを見るような目で見おってからに。公正な評価のためには思い出補正を禁止すべきではないか。

「じゃあ、じゃあ!サハラ砂漠で迷って死にかけたときに、ぐれてヤクザになった息子が作ってくれたオカユ!これがうまかった!これ一番おいしい!」と言ってやりました。

「まあまあ落ち着いて」と、ター坊になだめられた。小学二年になだめられた。ああ、彼ももう三年になるのか。大人になったなあ。オカユ食べる?

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