玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

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うっかり

▼仕事を請けている会社で打ち合わせ。

その会社の社員が一人退職した。彼は、放射能が心配なので西日本に越すということだった。その引継ぎについての話し合いだった。いろいろな理由で辞める人がいるのである。

その場に彼は居なかったが、社員の一人が彼を責めていた。責任感の無い態度であるとか、福島で暮らす逃げられない人たちもいるのに、その人たちはどうすればいいのかということだった。おまけに、彼の仕事を引き継ぐわたしが迷惑しているとも言ってくれた。

なるほどと感心してしまった。そういう感情と理屈は、わたしには想像できなかったが意外と普通のものかもしれない。わたしは彼が辞めたことについては特に何も思っていない。発表された放射能についての情報が本当に正しいものか判断できず、不安を払拭できない人がいるのも理解できる。怖いという人に「自分が怖くないから我慢しろ」とか「怖がるな」と言っても、どうにもならないだろう。怖いものは怖いのだから。

福島で暮らす人たちや原発で働く人、瓦礫の処理に当たる人は逃げることができずにいる。ただ、そのことと彼の行動は関係はない。彼が西日本に逃げようが逃げまいが何も変わらない。このまま不安な気持ちを抱えて仕事を続けるのも大変だろう。たしかに彼が辞めたことでわたしの作業は増えた。だが、仕事に厄介事はつきものだし、そんなことは当たり前である。

むしろ、わたしが気になったのは、彼を批難した社員が福島で暮らす人やわたしを引き合いにだして彼を批難したことだった。自分の不満を、他人の立場を借りて表明するというのは正当ではない。うっかりするとこれは自分もやってしまいそうである。こういうことこそ、気をつけねばならない。

わたしは、批難した社員への反発から「特に迷惑はしておりません」と言ってしまった。つい、うっかりである。その言葉のせいで、仕事を分担してもらうわけにもいかず、今わたしの前には山のような仕事があるのです。ちっちゃい脳みそで瞬間的に反応した結果がこれである。うーん、つい、うっかりなんだよねえ。ちょっと反発しちゃったんだよねえ。もうちょっと言い方を考えないとねえ。

まあ、気にすんな!たいした問題ではない。ないんですけどー。今度、見栄を張るときは作業量を考えて見栄を張る

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