玉川上水日記

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映画「レッド・サン」感想

▼レッド・サン / 仏・伊・西(スペイン)合作 1971 ケーブルテレビでやっており、あまり期待せずに観たのですが面白かったです。三船敏郎チャールズ・ブロンソンアラン・ドロンの共演という豪華な西部劇。 1870年、日米修好のためアメリカにやってきた日本使節団、彼らが乗っていた列車が強盗団に襲撃される。帝からアメリカ大統領に渡すための宝剣を奪われてしまう。しかし、強盗団は仲間割れし、裏切られたリンク(チャールズ・ブロンソン)は、裏切ったゴーシュ(アラン・ドロン)を追って、金のありかを聞き出そうとする。日本使節団の黒田(三船敏郎)も、宝剣を取り戻すためにリンクと共にゴーシュを追う。 明治三年、まだ侍が残っていた頃の話である。冒頭、強盗団の襲撃で帝から預かった宝剣が奪われる。現代人の感覚でいうと「アメリカは、ほんと物騒な国だわー」ぐらいだと思う。しかし、三船とその上役は違う。宝剣を取り戻せなかったら、責任をとって切腹するという。アメリカ大統領にしてみたら、自分の国で犯罪が起きて、それがもとで切腹されても国際問題になって困るはずである。面倒なジャパニーズだと思うんじゃないか。相手が困るとかは関係なく、とにかく自分の使命を果たそうとする責任感の強さが最後の侍という感じがした。 三船とチャールズ・ブロンソンの道中、その対照的な様子が面白い。小高い丘で休憩するシーンがある。そこでチャールズ・ブロンソンはごろんと横になる。それは、人柄を表すために、わざとちょっと崩した感じにしているのかもしれない。たいして、三船の座る仕草が美しい。威容がある。立ち居振る舞いだけで、ここまで唸らせる役者はいないのではないか。侍とはこういう形だったのではないかと思わせるほど。 チャールズ・ブロンソンの三枚目ぶりも際立っている。三船に、刀がなければおまえなんかに負けないというシーンがある。それならばということで、三船が刀を茂みに置く。チャールズ・ブロンソンが三船に殴りかかるのだが、これでもかというほど投げられる。地面に叩きつけられてのびているところを起こして、また投げる。もう、参っているのに何度も投げる。しまいに、チャールズ・ブロンソンが「今日はこれぐらいにしといてやる」というので、新喜劇かと思った。そのコテコテのやりとりを、この二人がやると面白い。 アラン・ドロンはこの二人に比べると、ちょっと影が薄かった。ただ、瞳の青さが本当に綺麗である。冷酷な役どころなのだけど、もうちょっと冷酷さを強調するエピソードが欲しかった。ラストの三人の絡みもわりとあっさり終わってしまう。殺陣も、CGなどないせいかシンプルである。その分、やはり三船敏郎の剣さばきが見事だった。飛苦無のような武器も使い、ちょっと忍者っぽい感じもするのだけど、そんなにおかしくはなかった。ハリウッドは、侍や忍者の扱いは滅茶苦茶である。そういったものに比べると、これほど日本人の感覚に近い侍を表現した作品はないのではないか。 ▼ひどい忍者映画、ありました。ふざけているんだろうけど、この誤解と偏見に満ちた日本観もわりと好きだった。最後のシーンなど、すごい死に方である。学芸会!
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