玉川上水日記

このブログの内容はすべてフィクションです

このブログの内容はすべてフィクションです

めんつゆトラップでコバエを捕まえる

▼役所関係の書類整理。税金にしろ保険にしろどうしてこんなに複雑なのか。ということは毎年きっと思っていて、終わったら「ま、いいか」となって、また今年もということを繰り返している。今年もその不毛さを味わった。やり方を思い出したぐらいに作業は終わる。

 

相撲は照ノ富士と隆の勝の優勝決定戦。照ノ富士は膝の具合が悪く、これから何場所とれるのかわからない。一方、隆の勝は優勝の経験はない。おそらく優勝の機会などそう何度もないだろう。どちらを応援したものか悩む。私が応援しても関係ないけど。隆の勝といえば、あだ名が「おにぎり君」で三角形のにこにこ顔の人。あだ名とは違って、梅おにぎりが苦手という。隆の勝は、勝負前に顔を手ぬぐいでぬぐって、その手ぬぐいを付き人に渡すとき、丁寧に畳んで渡す。所作がきれいな力士。ぐちゃぐちゃにしたまま渡す力士も多い中、そういった美しさは目立つ。そんなこんなで隆の勝を応援した。負けた。

 

相撲はほとんど観ないのでよくわからないが、私が注目しているのは表彰式の総理大臣杯の授与。基本的に総理大臣はやってこない。物価が高いとき、景気が悪いときは特にそうだろう。「遊んでないで仕事しろ」とヤジられるからかもしれない。安倍元総理が日馬富士優勝のときに来たのを最後に、来ていないのではないか。

 

総理大臣が来ない場合、代理の政府関係者が来る。表彰状を代読して、重さ40キロほどの総理大臣杯を優勝力士に手渡す。あの瞬間が代理人の見せ場で、性格が現れる。最初から賜杯を持つことをあきらめて係の人に手伝って持ってもらう人もいれば、意地で一人で渡そうとする人もいる。「お、どうなんだ? どうなんだ?」と見ていたら、今回はあっさり係の人に委ねていた。がっかりした。まるでやる気がない。

 

私はアレを見るために相撲を見ているんだ。素人が無理してヨロヨロしながら渡すのが面白いんじゃないか。私が代理人になったあかつきには、腰をやる覚悟で総理大臣杯を渡したい。そういう覚悟でいる。

 

 

▼AI。氷の床にねそべる猫。

こうして日がな一日過ごしたいもの。体だけ白猫になってしまったな。

 

 

▼この時期は仕方がないが台所にコバエが湧いてしまった。正確にはコバエというハエはいなくて、ショウジョウバエ、キノコバエ、ノミバエ、チョウバエなどの小さなハエの総称だという。コバエは駆除が厄介。以前、めんつゆトラップというものを見た。小皿に入れためんつゆに洗剤をたらしたものを置いておくと、コバエがかかるという。

 

わざわざコバエのためにめんつゆを使うのが悔しいので、やったことはなかった。だが、ソーメンを食べた残りの汁に洗剤をたらして混ぜればいいと思いついた。こうすればわざわざコバエのためにめんつゆを使わなくてよい。ホホホ。一晩放置しておくと10匹以上のコバエがかかっていた。きもー。嬉しくなって写真を撮ってしまったが、どうするんだこの気持ち悪い写真は。使いようがない。めんつゆトラップは人を狂わせるな。

 

隣席のTさんに「最近なにか楽しいことありました?」と訊かれたので、コバエのめんつゆトラップの話をした。「え、それが人生で楽しい事‥‥へー‥‥そういう人生?」など、コバエを見るような目で見られた。アホか、コバエを捕まえる以上に楽しいことが、人生にあるわけないだろうが。

 

翌朝、Tさんからメールが来ていた。「見てください! めっちゃコバエ捕れました!!!!!」と、めんつゆトラップの写真が添付されていた。気持ち悪いから送ってこないでほしい。「え、それが人生で楽しいこと? そういう人生?」と送り返す。

 

私たちは底辺同士で罵り合い、お互いの足を引っ張り合っていく。コバエのごとき人生。

 

 

▼映画の感想『』を書きました。中村ゆり、山田孝之の26分の短編映画。学生時代に付き合っていた二人が三十歳ぐらいになって再会。説明的なセリフを最小限まで削った作品。人によっては「何これ?」となるかも。私は好きでした。